ABPA(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)について

ABPAとは

ABPAはアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(Allergic Bronchopulmonary Aspergillosis)の略称で、アスペルギルス属真菌を原因とするアレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)です。
アスペルギルス属真菌は最も高頻度にABPMの原因となっている真菌で、特にアスペルギルス・フミガーツスや、スエヒロタケはABPMの原因真菌になりやすいと考えられています。
ABPMは主に成人喘息患者あるいは嚢胞性線維症患者の気道に発芽・腐生(持続生息)した真菌が気道内でⅠ型アレルギーとⅢ型アレルギー反応を誘発して発症する慢性気道疾患です。
ABPMの発症には生きている真菌が気道内に腐生することが必須ですが、菌糸はその大きさから下気道まで到達しえないため、まず第1段階として胞子が吸入されることが必要となり、第2段階としてその胞子が気道内で発芽し菌糸を形成するという流れになります。

ABPAとアスペルギルスの関係

アスペルギルス属真菌、特にアスペルギルス・フミガーツスの胞子は3μmと小さく、かつ至適発芽温度は37-42℃とヒトの体温と同程度であるため、容易に下気道内に吸引されて発芽、菌糸形成することができるとされています。
アスペルギルスのコンポーネントであるAsp f 1は、アスペルギルス・フミガーツスの胞子が発芽してから分泌されるため、Asp f 1 への感作は、アスペルギルスが気道内に腐生していることを示唆しています。
ABPA の診断は、注意深い経過観察に従って取得した複数所見の診断基準への適合をもとに進められるため容易でなく、数年以上かかることもあるといわれています。
アスペルギルスに感作した喘息、中でもアスペルギルス特異的IgE抗体価が高くコントロールが難しい症例や粘ちょうな喀痰の喀出既往があるなど、ABPAが疑われる患者に対してAsp f 1を測定することで、気道内腐生の可能性を確認し、早期に適切な治療を行うことが可能となります。

Asp f 1の検査意義

ABPAの診断基準には日本のアレルギー性気管支肺真菌症研究班による診断基準(2019年)などいくつかが知られていますが、いずれの診断基準においてもアスペルギルスに対する即時型皮膚反応陽性や特異的gE陽性であるなど、粗抽出アレルゲンに対する感作の確認を求めています。
また、ABPAであってもすべての方がAsp f 1に陽性と判定されるわけではありません。
したがって、ABPA診断の目的にはアスペルギルスとAsp f 1の両項目を組み合わせて検査することで、より正確な診断に寄与することができます。


※本コラムは、医療従事者を対象とした臨床検査に関連する情報提供を目的としたサイトです。一般の方に対する情報提供を目的としたものではございません。

この記事を書いた人

臨床検査センター 昭和メディカルサイエンス 照会業務部 Y.S.

医療現場で臨床検査を実施し、得られた各種データを活⽤して、診断や治療を支えるのが臨床検査センターの役割です。